ラルン五明仏学院の紹介

ハーバード大学

ケンポ・ジグメ・プンツォク(Khenpo Jigme Phuntsok, 1933—2004)は埋蔵経発掘者(テルトン)でダライ・ラマ十三世の師でもあったテルチェン・レラブ・リンパ(Las rab gling pa, 1856—1926)の転生者とされる。1980年、仏法の復興と一切衆生へ利益することを願い、中国四川省セルタ近辺のラルン谷にラルン五明仏学院(Gser rta lnga rig nang bstan slob gling)を建設した。従来、このラルンの地は金剛乗の聖地と考えられ、仏教の高い境地を得た僧侶を多く輩出した経緯があるため選ばれた。またこの地はドゥジョムリンパ(Bdud ‘joms gling pa, 1835—1904)が住んだ地であり、彼の十三人の弟子が仏教の高い境地を得たと言われている。この学院の目的は、「仏教徒が調和し団結すること」、「清浄なる戒律を維持すること」、「仏法の聞・思・修を実践すること」、「仏法を広め一切衆生に利益すること」、の4つを主としている。  1987年5月、パンチェン・ラマ十世(1938—1989)は学院の設立を許可し、チベット語で「ラルン五明仏学院」と記した額を奉納し、尊敬の意を込めケンポ・ジグメ・プンツォクを「智者法王」と呼んだ。その際、中国仏教協会の理事長である趙樸初も中国語で学院名を記した。この出来事は、まさにチベット仏教の復興時代の幕開けとなった。  ラルン五明仏学院での履修科目は、顕教、密教、一般教養の3部で構成されており、顕教の主な科目は、律、論理学、アビダルマ倶舎論、中観、唯識である。密教は様々な前行、生起次第、究竟次第、ゾクチェンを主な科目とし、一般教養では言語学、医学、チベット語などを学習する。  1999年、ラルン五明仏学院は、ニューヨーク・タイムズ誌により世界で最も影響力があるチベット仏教を学ぶことができる最も大きなセンターの一つとして紹介された。30年以上にわたって、同学院からは多くの仏教学者と修行者が輩出されており、同学院の出身者たちによって世界各地に仏教センターが設立されている。  現在、五千人を超えるチベット人および漢族が常住的に僧侶として学院に居住している。更に、学院が開講するオンライン・コースには世界中からの何十万もの信者が登録し、同学院のケンポ・ソダジ(Khenpo Sodargye, 1962—)のもとで学んでいる。